- Start Date
- 2025/08/27
- End Date
- 2025/08/29
- Event Details
-
日程:2025年8月27日(水) - 29日(金)10:00~17:00
会場:インテックス大阪(大阪府大阪市)
主催:RX Japan 株式会社
- URL
- /content/topcon-pa/jp/ja/events/2025/japan-build-osaka.html
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働き方
医師が解説!建設現場で鉄粉から目を守るための対策

建設業のフィールドワーク(現場の仕事)では、金属の切断、研磨、溶接などの作業中、目に見えないほどの小さな鉄粉が空気中に飛び散ることがあります。
これらの鉄粉が目に入ると、単なる異物感だけでなく、目の痛みや充血、さらには炎症や角膜の損傷といった深刻なトラブルが引き起こされる場合も。最悪の場合、放置することで失明に至るケースも報告されています。
一瞬の不注意が重大な結果を招くことのないよう、鉄粉から目を守るための適切な知識と対策を身につけることが不可欠です。眼科医の監修のもと、フィールドワーカー(現場従事者)の皆さまが鉄粉による目のトラブルを未然に防ぎ、万が一発生した場合に適切に対処するための具体的な方法を詳しく解説します。
建設現場の目のトラブル「鉄片異物」とは

建設業(土木・建築業)のフィールドワークでは、金属加工作業が数多く存在します。特に、グラインダーやサンダーを用いた金属の切断や研磨、アーク溶接などの作業では、高温になった金属片や微細な鉄粉が高速で飛散します。
これらの飛散物が目に入り、角膜(黒目の表面)や結膜(白目やまぶたの裏側)に刺さったり付着したりすると、目のトラブルに発展します。中でも、鉄片が角膜に刺さった状態は「鉄片異物(角膜鉄片異物)」と呼ばれ、作業の特性上、建設現場で特に発生しやすいと言えるでしょう。
鉄粉が目に入ると起こる症状

鉄片異物が起こった際の代表的な初期症状として、以下の例が挙げられます。
鉄片異物の発生時に感じる初期症状の例
・目の痛み
・異物感
・充血
・目のかすみ
・涙が出る
・まぶしく感じる
しかし、非常に小さな鉄粉の場合や、角膜の中心から外れた場所に刺さった場合など、初期には痛みをほとんど感じず、自覚がないケースも少なくありません。
「少しゴロゴロするだけ」「ゴミが入ったかな?」程度に考えて放置してしまうことが、事態を深刻化させる要因となります。少しでも目に違和感を覚えたら、安易に自己判断せず、必ず眼科を受診しましょう。
鉄片異物を放置するリスク

目に入った鉄粉を放置すると、重症化し、以下のような深刻な事態を招く恐れがあります。
角膜鉄症(かくまくてつしょう)
角膜に刺さった鉄粉が錆びて、角膜組織に茶色い色素沈着を起こします。角膜の濁りの原因となり、視力低下や慢性的な視機能障害につながります。
角膜炎・角膜潰瘍
傷口から細菌が入り、角膜炎や、角膜が深くえぐれる角膜潰瘍になることがあります。激しい痛みや視力低下を伴い、角膜に濁りが残って視力が回復しない恐れも。
失明
感染が目の奥まで広がったり、角膜に穴が開いたりすると、最悪の場合、失明に至るケースもあります。
一般社団法人 名北労働基準協会の「名北協会相談員日誌19」では、作業中の鉄片異物が原因で失明した労働者が、会社の安全対策が不十分だったとして訴訟を起こした事例が取り上げられています。わずかな鉄粉でも、放置すれば失明をはじめ取り返しのつかないことになりかねません。鉄粉が目に入る危険性をしっかり理解しておきましょう。
眼科医の声
鉄片異物の重症化リスクについては、異物の大きさや目に入った勢いなど、条件によってさまざまです。
しかし、飛散した複数の鉄粉が角膜(黒目)の中央部に刺さり、強い混濁(にごり)が後遺症として残ってしまった方は実際にいらっしゃいます。その方は、治療後もめがねでは視力が改善せず、ハードコンタクトレンズによる矯正が必要となりました。
また、特に注意していただきたいのは、自覚症状が乏しい場合です。症状が軽くても、傷に細菌が付着すれば角膜潰瘍などの病気につながる恐れがあります。そのまま放置すると、最悪の場合、角膜に穴が開いてしまうかもしれません。
目に何か入った後に「ゴロゴロする」「見えにくい」といった少しの違和感でもあれば、決して放置せず、お早めに眼科を受診するようにしてください。
鉄粉が目に入りやすい作業や状況

建設業のフィールドワークでは、鉄粉が目に入るリスクが高い作業や状況を把握し、適切な対策を講じることが重要です。
切断・研磨・溶接作業
金属加工の中でも、以下の作業は特に鉄粉が飛散しやすく、注意が必要です。これらの作業は、保護具の着用なしで行うことは極めて危険であり、労働安全衛生法および関連規則でも着用が義務付けられています。
切断・研磨作業
グラインダー、サンダー、高速カッターなどを使用して金属を切断したり、表面を削ったり、磨いたりする作業では、高温の火花とともに微細な鉄粉が勢いよく飛散します。これらの工具は手元で操作することが多く、顔や目に鉄粉が飛んでくるリスクが非常に高くなります。
溶接作業
アーク溶接やガス溶接などを行う際にも、スパッタと呼ばれる高温で溶けた金属の粒が飛散します。スパッタには微細な鉄粉も含まれており、目に入る危険性は無視できません。また、溶接後のスラグ(溶接カス)を除去する際にも、破片が飛ぶことがあります。
強風時の屋外作業
屋外での作業は、天候の影響を大きく受けます。特に風が強い日は注意が必要と言えるでしょう。
風による飛散範囲の拡大
切断や研磨作業で発生した鉄粉が、風によって予期せぬ方向へ広範囲に飛散することがあります。作業者本人だけでなく、周囲でほかの作業をしている人にも危険が及ぶ恐れがあります。
地面からの巻き上げ
地面に落ちている砂塵や金属粉が、強風によって舞い上がり、目に入ることもあります。
周囲への配慮
建設現場の近くを通行する歩行者や、近隣の住民に鉄粉が飛散し、被害を与えてしまうリスクも考慮する必要があります。防塵ネットの設置や作業時間帯の調整などの対策を行いましょう。
保護めがねの不備や不使用
鉄粉が飛散する作業での保護めがね着用は、法律で定められた必須事項です。労働安全衛生規則の第五百九十三条では、粉じんが発散される場所での作業において、事業者は労働者に保護めがねなどを使用させる義務があると定めています。
しかし、以下のような状況では、保護めがねの効果が十分に得られません。保護めがねは、ただ着用するだけでなく、「正しく」「適切に」使用することが重要です。
不適切な保護めがねの使用
作業内容に適した種類・性能の保護めがねを使用しない場合、鉄粉の侵入を防ぎきれないことがあります。例えば、通常の度付きめがねやサングラスでは、側面や上下からの飛来物を防ぐことはできません。
正しく装着できていない
顔と保護めがねの間に隙間があると、そこから鉄粉が入り込む恐れがあります。サイズの合わないものや、ズレた状態での使用は危険です。
傷や破損がある
レンズに傷やヒビが入っていたり、フレームが破損していたりすると、保護性能が低下するだけでなく、破損部分で目を傷つける恐れもあります。
そもそも着用していない
「少しの時間だから」「慣れているから」といった油断から着用を怠ることが、重大な事故につながります。
鉄粉が目に入ってしまった際の応急処置

万が一、作業中に鉄粉が目に入ってしまった、あるいは入ったかもしれないと感じた場合は、慌てずに応急処置を行いましょう。ただし、応急処置はあくまで眼科を受診するまでの一次的な対応であり、自己判断で治療を完結させないことが重要です。
絶対に目をこすらない
目にごみが入ると、無意識に手でこすってしまうことがあります。しかし、鉄粉が入った場合に目をこすることは避けてください。目をこすることで角膜を傷つけたり、鉄粉が奥へ入り込んだりする危険性があるためです。
異物感や痛みがあっても、ぐっとこらえ、手で目に触れないようにしてください。どうしても違和感が強い場合は、軽くまばたきを繰り返す程度に留めましょう。
眼科医の声
目に異物が入った際、違和感からつい目をこすってしまうかもしれませんが、その行為はかえって角膜へ深刻なダメージを与えてしまう恐れがあります。
もし鉄片などの異物が角膜に浅く刺さっている場合、目をこする力でその異物がズレてしまいます。すると、角膜のきれいな部分まで傷つけてしまい、結果として治療後の混濁(にごり)の範囲を広げてしまうリスクがあります。
目に異物が入ってしまった場合は決して無理にこすらず、まばたき程度にとどめましょう。浅く刺さった異物の場合、こすることがきっかけで目のキズを増やしてしまう危険性があることを、ぜひ覚えておいてください。
清潔な水で目を洗い流す
鉄粉が目の表面に乗っているだけの場合、洗い流すことで除去できる可能性があります。洗い流す際は、水道水などの清潔な流水を使用します。
可能であれば、体温に近いぬるま湯が刺激が少なく、良いでしょう。洗眼液や洗眼カップがあれば、それを使用するのも有効です。ただし、洗眼カップは使い回しせず、清潔なものを使用してください。
洗い方
1. 手を石鹸でよく洗います。
2. 顔を横に向け、鉄粉が入ったと思われる方の目を下にします。
3. まぶたを指でゆっくりと大きく開けます。可能であれば、周囲の人に手伝ってもらいましょう。
4. 流水をまぶたの内側から目頭、目尻の方向へ、弱い水流で優しく流しかけます。決して強い水圧で直接眼球に当てないでください。
5. 眼球を上下左右にゆっくり動かしながら、最低でも10~15分程度、十分に洗い流します。
ただし、無理に鉄粉を取り除こうとするのはNGです。とくに、洗い流しても異物感や痛みが取れない場合は、鉄粉が角膜に刺さっている恐れがあるため、早めに受診してください。
眼科医の声
目に異物が入ったら、まずは水で洗い流してください。生理食塩水があれば理想ですが、なければ水道水や、自動販売機などに売っているペットボトルの水でもかまいません。
ただし、鉄片は角膜に刺さっていることが多く、洗眼だけで取り除くのは難しいのが実情です。ご自身で取れるかの判断は困難なため、洗眼はあくまで応急処置と考え、症状が改善しない場合は速やかに眼科を受診しましょう。
医療機関(眼科)を受診する
応急処置を行っても異物感や痛み、充血といった症状が残るようであれば、必ず医療機関(眼科)を受診してください。無理に自分で鉄粉を取り除こうと試みるのは危険です。かえって目を深く傷つけてしまう恐れがあるため、絶対にやめましょう。
受診する際には、どのような作業中に、どのようにして鉄粉が目に入ったのか、できるだけ詳しい状況を医師に伝えることが、的確な診断と治療のために重要です。
眼科医の声
目に鉄片が入り、洗眼しても見えにくさや痛みが残ったり、症状が悪化していたりする場合は、すぐに眼科を受診してください。
受診の際は「いつ、どのような金属が、どんな勢いで入ったか」を教えていただけると診断の助けになります。眼科では点眼で麻酔をした後、専用の針などで異物とサビを除去します。
処置が済めば1週間ほどで症状は改善することが多いですが、角膜に混濁(にごり)が残ると完治に数ヶ月を要することもあります。早期の適切な処置が大切です。
鉄粉が目に入るのを防ぐための対策

鉄粉による目のトラブルは、適切な対策を講じることで未然に防ぐことが可能です。
保護めがねの着用や健康診断の実施など、法律で義務付けられている対策もあり、違反すると事業者にも罰則が科されることもあります。自身や従業員の安全ならびに法令遵守のために、日々の作業において対策を徹底しましょう。
保護めがねの着用
浮遊粉じん,薬液飛まつ(沫),飛来物などから作業者の目を保護するために用いる保護めがね
厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」では、鉄粉や研削くずのような細かい粒子が飛散する作業では、側面や上下からの侵入を防ぐ効果が高いゴーグルタイプのめがね着用が推奨されています。
眼科医の声
ゴーグルタイプの保護めがねを正しく着用していれば、鉄片異物のリスクはほとんどないと言えるでしょう。安全性を高め、ご自身の目を守るためにも、ぜひ着用を徹底していただければ幸いです。
作業環境の整備
作業環境の整備も、鉄粉の飛散リスク低減に向けた効果的な対策のひとつです。
まず、整理整頓を心がけ、鉄粉の堆積や舞い上がりを防ぎましょう。さらに、集塵機や局所排気装置などで発生源の鉄粉を除去し、十分な換気で空気中の粉塵濃度を下げることが効果的です。水を使う湿式作業で粉じんの発生を抑える方法もあります。
加えて、パーテーションで作業場所を囲ったり、屋外では風向きに配慮したりすることも有効でしょう。これらの対策は、作業者のみならず周囲の安全にもつながります。
眼科医の声
作業場の粉塵濃度が高いと、ドライアイや角膜が傷つく「角膜上皮障害」を誘発し、異物感や痛みの原因となります。
集塵機や換気によって粉塵濃度を適切に管理することは、これらの目の病気や不快な症状を予防するために、医学的にも非常に重要です。
日頃の心がけと定期的な検診
保護具や環境整備に加え、日頃の心がけも目を守るために大切です。作業後は手洗いを徹底し、洗顔で目の周りの鉄粉も洗い流しましょう。ただし、目をこすらないように注意してください。
コンタクトレンズを使用している方は特に注意が必要です。鉄粉がレンズと角膜の間に入ると危険なため、リスクの高い作業での装用は避け、保護めがねやゴーグルなどを装着しましょう。作業後はレンズの十分な洗浄も忘れずに行ってください。
また、自覚症状がなくても、年に一度程度の定期的な眼科検診で目の健康状態を確認し、異常の早期発見につなげましょう。
眼科医の声
作業後の洗顔は、顔の粉塵が目に入らないよう軽く目を閉じて行いましょう。
それに加え、定期的な眼科検診も非常に大切です。自覚症状がないまま進行している角膜の傷やドライアイなどの病気を早期に発見し、重症化を防ぐことができますので、定期的な受診をおすすめします。
鉄粉から目を守って安全に作業しよう
建設業のフィールドワークは、鉄粉が目に入る作業や状況が少なくありません。中には大きく視力が下がり、業務に支障が出てしまうケースもあります。
目を守って安全に作業するためには、万が一の際の応急処置を知ると同時に、保護めがねの適切な着用を徹底し、作業環境を整えることが重要です。保護めがねはゴーグルタイプのものを着用することで、鉄片異物のリスクを大きく低減できるでしょう。
また、少しでも目に異常を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診することも大切です。自覚症状が乏しいまま進行する目の病気もあるため、早期に発見し、重症化を防ぐためにも、定期検診も重要な役割を果たします。
目を大切にすることは、安全に長く建設業で働くための基本です。日々の注意と専門家による定期的なチェックで、大切な目を守りましょう。

監修者 栗原大智(くりはらだいち)
日本眼科学会眼科専門医
関東近郊の総合病院で眼科診療に従事する傍ら、Webメディア「オンライン眼科」の編集長兼眼科医ライターとして、1,000以上の記事を執筆。目の健康、眼科に関する記事をほぼ毎日作成している。X(ドクターK@眼科医パパ)アカウントはフォロワー5.2万人超。
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