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2026/07/15

時事問題

建設業の36協定とは?2026年の運用実態と、時間外労働の上限を守る現場管理の方法

36協定

建設業の36協定が2024年4月に適用されてから、気付けば2年が過ぎました。今、現場はどのように動けばいいのでしょうか。

 

「特別条項付きの36協定を結べばどこまで時間外労働が可能になるのか」「梅雨で工期が1週間押したとき、その残業は36協定の枠内に収まるのか」「労働基準監督官が来たとき、何を見られるのか」など、管理者の悩みは尽きないはずです。

 

この記事では、施工管理者や現場担当者、そして工事部門の労務管理担当者が抱える実務的な疑問に答える形で、以下について解説します。

  • 建設業の36協定における時間外労働の上限規制と特別条項の正確なルール
  • 特別条項付きの36協定を結んでも超えてはいけない「絶対的上限」と罰則の内容

  • 災害復旧・復興工事に適用される例外規定の範囲と注意点

  • 36協定届の新様式(4パターン)の使い分け方

  • リアルタイム勤怠管理とICT施工による時間外労働抑制の方法

  • 発注者に適正な工期を認めてもらうための根拠データの示し方

36協定を守りながら現場を回すための、具体的な道筋の参考になれば幸いです。

建設業の36協定とは?

アスファルトの補修工事

建設業の36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づき、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間外労働、または法定休日の労働を従業員に命じる場合に、使用者と労働者代表との間で締結する労使協定のことです。締結後は所轄の労働基準監督署に届け出る義務があります。

 

労働基準法では、36協定を締結・届出していない事業場は、原則として法定労働時間を超えて労働させることができません。建設業はかつて、天候リスクや工期の絶対性、多層的な下請構造といった作業工程の特性を理由に、この上限規制の適用から除外されていました。いわば「36協定を結びさえすれば、残業時間に法的な上限がない」状態が長く続いていたのです。

 

その状況が変わったのが2024年4月です。2019年の労働基準法改正で設けられた5年間の適用猶予が終わり、建設業にも時間外労働の上限規制が罰則付きで適用されました。この変化は、単に書類の書き方が変わるなどの話ではありません。現場で起きる突発的な時間外労働の一つひとつが、刑事罰につながりうる行為になったという、構造的な転換です。

 

【参考】厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

建設業の36協定における時間外労働のルール

建設業の36協定における時間外労働のルール

36協定のルールは、「原則上限」と「特別条項付きの36協定を結んだ場合の上限」、そして「どちらにも適用される絶対的上限」の3層構造になっています。現場担当者が誤解しやすいポイントを整理します。

36協定の時間外労働に罰則付き上限規制が適用される

原則として、36協定で定められる時間外労働の上限規制は月45時間・年360時間です(1年単位の変形労働時間制を採用する場合は月42時間・年320時間)。この枠を超えて労働させることができるのは、臨時的・特別な事情がある場合だけです。

 

2024年4月以降、この上限に違反した事業者には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、違反の内容が悪質と判断されると、厚生労働省により企業名が公表される場合があります。現場での「慣習的な残業」が、経営者の刑事責任に直結する行為となった——これが2024年以降の最大の変化です。

 

なお、違反は36協定を締結せずに時間外労働させた場合と、締結していても定めた上限時間を超えて労働させた場合の両方に適用されます。

特別条項付き36協定を締結しても上限を超えられない

月45時間・年360時間を超えて時間外労働をさせる必要がある場合、特別条項付き36協定を締結することができます。ただし、特別条項付きの36協定を結べば無制限に時間外労働をさせられるわけではありません。以下の条件がすべて同時に満たされる必要があります。

  • 時間外労働の年間合計:720時間以内(休日労働を除く)
  • 時間外労働と休日労働の合計:単月100時間未満

  • 時間外労働と休日労働の合計:連続する2〜6ヶ月の平均がいずれも月80時間以内

  • 月45時間を超える時間外労働は年6ヶ月まで

このうち単月100時間未満・2〜6ヶ月平均80時間以内の2条件は、特別条項付きの36協定に適用される絶対的上限です。特別条項付きの36協定を結んでいたとしても、この2条件いずれかの上限時間を超えると即座に法律違反になります。

 

現場管理者が特に注意すべきは「累積」の管理です。たとえば、3〜5月に毎月80時間の時間外労働・休日労働をさせた場合、その3ヶ月の平均はちょうど80時間になります。6月にわずかでも時間外労働が増えると平均が80時間を超え、特別条項があっても違反になるという「気づかないうちに上限を超過する」リスクが、建設現場では現実として起きえます。

災害時の復旧・復興の事業には例外規定が適用される

建設業固有の例外として、災害時の復旧・復興の事業については、上記の絶対的上限のうち「単月100時間未満」「2〜6ヶ月平均80時間以内」の2条件が適用されません。台風や地震などの災害発生後、緊急の復旧工事に従事する場合、通常の時間外労働上限を超えた対応が法的に認められています。

 

ただし、適用除外となるのはあくまでもこの2条件に限られます。「年間720時間以内」という上限、および月45時間を超える時間外労働は年6ヶ月までという条件は、災害復旧・復興工事であっても適用されます。当然ですが「災害時だから何でも許される」というわけではないため、注意が必要です。

 

また「災害時」とは、通常では予見できない災害を前提としています。工期が短く設定された通常工事が繁忙になったというだけでは、この例外規定は適用されません。36協定の届出様式も、この例外規定の有無によって分岐します。

 

【関連記事】災害復興における建設業の使命や役割とは?土木技術で取り戻す被災地の日常

 

【参考】e-Gov法令検索「労働基準法

建設業の36協定届における新様式の書き方

資料にペンで書く作業着を着た女性

2024年4月1日以降の36協定届は、事業の区分と特別条項の有無によって使用する様式が4パターンに分かれます。旧様式(様式第9号の4)はすでに使用できません。

 

使用する様式は以下のとおりです。

  • 一般的な建設事業・特別条項なし → 様式第9号

  • 一般的な建設事業・特別条項あり → 様式第9号の2

  • 災害時の復旧・復興の事業・特別条項なし → 様式第9号の3の2

  • 災害時の復旧・復興の事業・特別条項あり → 様式第9号の3の3

この4パターンへの分岐が、建設業の届出を複雑にしているポイントと言えるでしょう。例えば同じ会社が複数の工事を抱えている場合、元請の工事であって現場事務所が設置される工事については現場ごとに36協定の提出・届出が必要です。

 

一方で、元請の工事であっても現場事務所が設置されない工事や、下請の工事の場合は、事業の拠点(本社・支店など)をひとつの事業場として36協定を締結の上で届け出ます。

記載時に確認すべき主要な項目

様式には「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」「業務の種類」「労働者数」「延長できる時間数(1日・1ヶ月・1年)」「起算日」「有効期間」などを記載します。

 

特別条項付きの場合は、さらに「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」「1年の上限時間」「限度時間を超えた場合の割増賃金率」「限度時間を超える回数(年6回以内)」を記載します。

 

記載上の注意点として、36協定は「会社全体」ではなく事業場ごとに締結・届出する必要があります。本社・支店・出張所のような固定の事業場はもちろん、元請事業者における現場事務所も事業場に該当するため、自社の実態に照らして確認すると良いでしょう。

 

また、建設業の場合は現場作業従事者だけでなく、内勤の事務職・営業職の従業員も同じ様式で届け出る必要があります。各様式のダウンロードは厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」から可能です。

 

【参考】厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)

36協定違反を防ぐための現場管理とICTの活用

タブレットを持って工事現場を点検する職人

36協定の遵守は、書類の整備だけでは完結しません。日々の現場で何時間働いているかをリアルタイムに把握し、上限に近づいたら対策を打てる仕組みが必要です。

 

勤怠管理システムの導入は実態を把握するためには有効ですが、本質的には「どうすれば残業そのものを減らせるか」を考えなくてはなりません。ICT施工は、その根本解決に近い手段のひとつと言えるでしょう。

リアルタイムな勤怠管理で時間外労働の予兆を把握する

36協定の運用管理においてありがちなのは、「月末になって初めて上限超過に気づく」ケースです。特に特別条項の回数(年6回)や2〜6ヶ月の平均80時間という累積管理は、日々の集計なしには見えてきません。

 

特に、現場に直行直帰が多い建設業ではタイムカードによる管理が困難なケースも多く、スマートフォンやICタグを活用した入退場管理システム、クラウド型勤怠管理ツールなどの導入が有効です。重要なのは、「1ヶ月の時間外労働時間の合計」「特別条項を使用した月数の年間累計」「2〜6ヶ月の移動平均」をリアルタイムで確認できる環境を整えることです。

 

現場担当者レベルで自身の時間外労働状況を確認できる仕組みをつくることで、「今月あと何時間まで残業できるか」が上司・担当者の双方にとって共通認識となり、突発的な時間外労働の依頼に対しても根拠を持って判断できるようになるでしょう。

ICT施工による工期短縮が時間外労働削減の根本解決になる理由

時間外労働の原因のほとんどは、「工期内に作業量が収まらない」という構造による問題です。勤怠管理で時間外労働を「見える化」しても、そもそもの作業時間が減らなければ、上限を超えないようにするためには工期を延ばしてもらうしかありません。

 

ICT施工は、この作業時間そのものを圧縮する技術です。具体的には、3次元測量データを活用したマシンコントロール(MC)・マシンガイダンス(MG)技術により、熟練オペレーターでなくても高精度の施工が可能になります。丁張り設置や測量の往復作業が大幅に減り、出来形管理の書類作成も自動化・半自動化されます。

 

i-Construction 2.0に関する国土交通省の発表によれば、ICT活用工事が導入されていない2015年度と比較して、2022年度時点で建設現場の生産性は約21%向上しています(作業時間短縮効果から算出)。ICT土工における作業時間の縮減効果は、工種によっておおむね3割程度とされています。

 

作業時間が3割縮減されるということは、逆算すると「同じ工期でも残業時間が大きく減る」か「同じ人員で工期を短縮できる」可能性を意味します。36協定の上限内で現場を回せるかどうかは、ICTを導入しているかどうかが大きく左右する時代になっています。

 

i-Construction(アイコンストラクション)とは 国土交通省による生産性向上を目的としたICT技術活用の取り組み

 

【参考】国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~

 

発注者との交渉はどうする?適正な工期設定を求めるために

握手する作業着のビジネスマン

36協定の遵守に向けた取り組みを現場内だけで完結させるには、限界があります。時間外労働が増える最大の原因のひとつは、工期設定が実態に見合っていないためです。

 

週休2日を前提とした適正な工期が認められなければ、36協定の上限は絵に描いた餅になってしまうでしょう。発注者に対して適正な工期を求める際に使える根拠を整理します。

「工期に関する基準」を活用して発注者と交渉する

2020年7月、中央建設業審議会において「工期に関する基準」が制定されました。さらに2024年3月27日、罰則付き時間外労働規制の適用に合わせてこの基準が改定され、受発注者双方の責務が具体的に記述されました。

 

この基準は、発注者が工期を設定する際に考慮すべき事項を定めたものです。受注者はこの基準を根拠として、「週休2日を確保した場合の必要日数」「降雨・降雪による不稼働日数」「準備・後片付け期間」「余裕期間」などを具体的な数字で示しながら、発注者に工期の延長や見直しを求めることができます。

 

また、2020年10月に施行された改正建設業法では、著しく短い工期の設定を禁止しており、違反した発注者は国土交通大臣等から勧告・指示・公表を受けるリスクがあります。「短い工期を強いることは、発注者側にとっても法的リスクになる」という認識を、交渉の場で共有することが重要です。

 

【関連記事】【2025年12月全面施行】改正建設業法の3つの新ルールとは?元請負人・下請負人の取り組みについて解説

 

【参考】国土交通省「建設・不動産業:工期に関する基準

 

施工データとICT計測の記録が、交渉の武器になる

発注者との交渉を有利に進める上で効果的なのが、ICT施工・ICT測量によって蓄積されたデータの活用です。

 

ドローン計測や3次元測量機器で取得した地形データ、マシンコントロール施工の稼働ログ、勤怠管理システムが記録する日次の労働時間データなどは、いずれも「この現場では標準的な工期のなかでこれだけの作業量がある」「天候によるロスがこれだけ発生した」を客観的に示せる証拠になります。

 

「こう言われたから残業した」という口頭のやり取りではなく、データに基づいて「この工期でこの品質を実現するためには、あと〇〇日必要だ」と示せるかどうかが、受発注者間の信頼関係のベースとなるでしょう。

 

また、CCUS(建設キャリアアップシステム)と組み合わせることで、技能者単位の就労実績も記録・提示できるようになり、工期設定の根拠をさらに厚くすることができます。

 

【関連記事】建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?導入メリットや事業者登録の流れなどを解説

建設業の36協定に関するよくある質問(FAQ)

建設業の36協定に関するよくある質問(FAQ)

最後に、36協定の運用について、現場や施工管理の現場からよく寄せられる疑問に答えます。

Q1. 一人親方(個人事業主)にも36協定の上限規制は適用される?

一人親方には適用されません。 36協定は使用者と労働者の間で締結するものであるためです。一人親方は法律上「労働者」ではなく「事業者」に該当するため、労働基準法上の時間外労働規制の対象外となります。

 

ただし、実態として特定の会社の指揮命令下に置かれている場合は「労働者性あり」と判断されるケースもあり、労働基準監督署のチェック対象になることがあります。

Q2. 特別条項の「臨時的な特別な事情」とは?

特別条項を適用できる「臨時的な特別な事情」とは、当該事業場において通常予見できない業務量の大幅な増加が生じ、それに伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合です(労働基準法第36条第5項)。

 

注意が必要なのは、「繁忙期だから毎年特別条項を使う」という運用は「臨時的ではない」とみなされるリスクがある点です。年間を通じて常態的に特別条項を適用し続けることは、法の趣旨に反するとして問題になるリスクがあります。

Q3. 36協定は本社でまとめて出していい?

事業場ごとに届け出る必要があります。 36協定は各事業場の実態に即した内容で締結するものであり、本社でまとめて提出することはできません。複数の現場を抱える会社の場合、それぞれの現場の状況に応じた管理が必要です。

Q4. 労働基準監督官が現場に来た場合、何を見られる?

主な確認対象は、36協定届の有無と内容・有効期限、タイムカードや勤怠記録などによる実労働時間の把握状況、協定で定めた上限時間の遵守状況、割増賃金の適切な支払い状況などが考えられます。

 

建設業では、入退場記録が勤怠管理の証拠になります。ICTによる入退場記録はデジタルで保存されるため、確認を求められた際に迅速に対応できます。

 

加えて、建設業においては、作業主任者や特別教育の実施状況に関する情報・書類などを即座に提示できるよう日頃から整理しておきましょう。

Q5. 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げは、建設業にも適用されている?

はい、適用されています。 2023年4月から、中小企業においても月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%に引き上げられました。これは建設業の中小企業も対象です。

 

月60時間を超えた分の賃金コストが増加するため、長時間の時間外労働が続く現場では、ICT導入による工期短縮を通じた時間外労働の削減が、コスト管理の観点からも有効な手段と言えるでしょう。

まとめ:36協定の遵守は「書類」ではなく「現場の仕組み」で実現する

建設業の36協定における時間外労働上限規制は、2024年4月の罰則適用開始から2年が経過しました。

 

原則、上限は月45時間・年360時間。特別条項を結んでも年720時間以内、単月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内の絶対的上限があります。届出様式は4パターンに分かれており、旧様式は使えません。罰則は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、悪質な場合は企業名の公表です。

 

しかし、もっとも重要なことは、36協定の遵守は「届出が正しくできているか」だけの問題ではないという点です。工期が実態に見合っていなければ、現場担当者がどれだけ努力しても上限はいつか超えてしまいます。時間外労働を減らすための根本は、ICT施工による生産性向上と、発注者への適正工期の働きかけと言えるでしょう。

監修者 松本幸一(まつもとこういち)

監修者 松本幸一(まつもとこういち)

社会保険労務士

 

ハローワーク正職員時代に社会保険労務士試験に合格。その後、社会保険労務士事務所、プライム上場企業人事部勤務を経て、現在は開業社会保険労務士として建設業を含め幅広い業種の顧問先の労務管理に携わる。

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2026/07/22
End Date
2026/07/23
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ー 100年企業をめざして ー

日程:2026年7月22日(水)10:00~16:00・23日(木)10:00~15:30

会場:炎の博記念館(佐賀県西松浦郡)

主催:精密舎株式会社

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