- Start Date
- 2025/02/26
- End Date
- 2025/03/11
- Event Details
-
日程:
2024年12月10日(火)、17日(火)
2025年1月15日(水)、28日(火)
2025年2月26日(水)
2025年3月11日(火)
開催場所:関東トレーニングセンタ
参加費:無料(事前登録制)
主催:株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン
協賛:KENTEM(株式会社建設システム)、福井コンピュータ株式会社
- URL
- /content/topcon-pa/jp/ja/events/2024/esn-100-kui-navi-family-trial-kanto.html
- Target
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時事問題
災害復興における建設業の使命や役割とは?土木技術で取り戻す被災地の日常

日本は地震や台風、豪雨、豪雪といった自然災害が頻発する災害大国です。未曾有の災害が発生するたびに、建設業界は叡智を結集して、被災地の復旧・復興に多大なる貢献を果たしてきました。特に、世界的に見ても優れた日本の土木技術は、インフラの迅速な復旧や、地域社会の復興を支えています。
さらに、近年は災害復興の現場でもDXが進み、ドローンや3Dレーザースキャナーなどの技術革新が、より迅速かつ安全な復興作業を可能にしています。
災害復興における建設業の使命や最新の技術導入を知ることで、次世代の若手フィールドワーカー(現場従事者)へ期待される取り組みについて紹介していきたいと思います。
災害復興における建設業の役割

災害が発生し、甚大な被害を受けた被災地の復旧における初動において、土木・建設業の技術力が重要な役割を果たしています。土木分野の叡智を被災現場で活用することにより、被害の拡大を最小限に抑え、より迅速で安全な復旧の手助けへとつながり、地域社会の復興を支えています。
そんな災害復興の最前線で活躍するのが、地域に根差した建設会社のフィールドワーカーです。地域建設業は災害時の「守り手」として緊急事態に即応できるよう、平時から自治体と防災協定を締結しています。その地域密着型の強みを活かし、被災状況の迅速な把握や緊急車両の通行ルートの確保など、ゼネコンが対応を開始する前の初動を担い、復興作業に欠かせない重要な役割を果たしています。
災害被害の未然防止

【出典】国土交通省|高規格堤防について
日本の土木・建設業がこれまで培ってきた実績やノウハウは、災害による被害を最小限に抑える上での防災施設の整備に役立っています。堤防やダム、防災道路、耐震構造の強化などが代表例です。
例えば、首都圏や近畿圏で行われた「高規格堤防(スーパー堤防)」の整備は、大規模な水害に備える重要な施策と言えるでしょう。
高規格堤防は、一般的な堤防の高さの30倍程度の幅を誇る堤防です。水害時に、越水や侵食、浸透による堤防決壊を防ぐことで、壊滅的な被害の回避が期待できます。さらには、震災時にも液状化による市街地の壊滅的な被害を避けられるほか、周辺住民等の避難場所としての機能も有します。
物理的な施策のほか、災害に対して企業が事前に策定する「事業継続計画(BCP)」も、建設業において不可欠な要素です。
非常時のインフラの復旧や仮設住宅の建設など、社会的な使命を果たす業種である建設業は、災害発生時の対応をきちんと取り決めておくことが求められます。
事業継続計画(BCP)とは
企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと
【出典】中小企業BCP策定運用指針
例として、数ある建設会社の中でも明確に事業継続計画を定め、かつ自社サイトで内容を公開している村本建設株式会社では、事業継続計画における重要業務を、以下のとおり定めています。
- ・施工中現場の被害状況の確認・二次災害防止
- ・関係する行政機関に対しての連絡調整
- ・災害協定業務の着手(応急・復旧業務:倒壊建物除去)
- ・施工中の工事の業務継続
- ・自社施工済み物件の確認・復旧支援
- ・近隣の救助活動
事業継続計画の立案によって、非常時にも事業の維持や早期復旧を行い、自社の損失を最小限に抑えることが可能です。また、地域の復旧などにもいち早く貢献できる可能性が高いだけに、顧客や取引先、株主や金融機関などからの信頼も高まる点もメリットと言えます。
応急対応と復旧
災害発生直後に建設業の企業が応急対応に協力することは、地域社会の安全と復興に直結します。具体的には、道路の啓開やがれき撤去、ライフラインの復旧がその一部です。
直近の例を挙げると、2024年の能登半島地震では、以下のゼネコン12社がすぐに現地に駆けつけ、24時間体制で道路の復旧に尽力し、交通網の確保に貢献しました。
- ・安藤ハザマ
- ・大林組
- ・鹿島建設
- ・熊谷組
- ・五洋建設
- ・佐藤工業
- ・清水建設
- ・大成建設
- ・東急建設
- ・戸田建設
- ・西松建設
- ・前田建設工業
- (五十音順)
能登半島地震では、各ゼネコンは土木工事や建築工事、インフラ復旧といった分野におけるそれぞれの強みを活かして、プロジェクトごとに担当企業を決定し、効率的な分業を実現しています。
特に幹線道路においては「国道249号沿岸部」「ライフライン復旧関連路線」「能越自動車道等」の3つに分けて緊急支援チームが編成され、各社が復旧作業に全力を注ぎました。また、幹線道路以外の道路の復旧は、おもに市町村から要請を受けた地元の建設会社が担いました。
緊急復旧対応が早期に完了した建設会社の中には、ほかの地域の復旧支援に回る会社も少なくなかったようです。建設会社に勤める従業員も被災している中、被害の全容が見えない状況で復旧作業に尽力したのは、まさに敬意を抱くに値する対応です。このような分業・協力体制により、被災地の早期再建が実現したのは言うまでもありません。
また、インフラの確保のみならず、被災者の生活再建の支援も建設業に望まれる役割です。
2018年の西日本豪雨では、ゼネコンのみならず、全国の地域工務店からなる(一社)JBN・全国工務店協会と、同じく全国の建設労働者・職人からなる全国建設労働組合総連合(全建総連)の2団体が地域に根ざした建設会社と連携して、愛媛164戸、岡山57戸、広島31戸の木造応急仮設住宅を建設し、被災者の生活をサポートしました。
このような活動は、地域社会からも高く評価され、多くの人から感謝されています。
長期的な復興支援
災害の応急対応が一段落した後は、長期的な復興支援のフェーズへと移行します。
2011年に発生した東日本大震災後の護岸工事では、リサイクル材を使用した耐久性の高い護岸が建設され、津波災害に対する防御力が強化されました。
また、能登半島地震では、地域に根ざす建設会社が被災者のニーズに応じた仮設住宅を提供し、被災者から喜びの声が挙がっています。
復興支援にあたっては、ゼネコンのみならず、地域密着型の建設会社だからこそできるサポートや取り組みが重要になります。
例えば、災害後の清掃作業や、仮設住宅の居住環境の改善など、住民が直面する日常の課題にも企業の力が必要です。被災者の意見を直接聞きながら、必要な補修工事や仮設住宅の追加工事などを即座に行えるのは、地場の企業ならではの強みと言えるでしょう。
このような、可視化されにくいニーズをキャッチし、現場で親切丁寧に対応することこそが、災害時に地域の建設会社に求められる役割です。
災害復興現場でのDX導入事例

建設業界ではDXが進展しており、災害復興の現場でもデジタルを駆使した技術革新が応用されています。最新の技術は効率的な復旧作業を支えるだけでなく、復興のスピードを加速させ、フィールドワーカーの安全確保にも大きく貢献しています。
UAV(ドローン)レーザー測量技術
2024年現在、ドローン技術は多くの土木・建設現場で導入されています。ドローンは危険な地域でも安全に広範囲の被害状況を俯瞰して撮影できるため、その映像は被害状況の調査に活用され、迅速な復旧計画の立案に一役買っています。
2018年の西日本豪雨では、UAVレーザー測量技術を用いて被害状況の調査が行われています。この調査を基に被災直後の地形をデータ化することにより、迅速な復旧への貢献ができました。
また地形データの活用は、崩落の危険性がある現場で24時間体制で作業を行うフィールドワーカーの安全確保においても、大いに貢献しています。
3Dレーザースキャン技術
3Dレーザースキャン技術は、災害復旧の現場でも、新たな標準技術として活用されています。
2021年2月と2022年3月に発生した福島県沖地震では、3Dレーザースキャナーを使って原子炉建屋の被害状況が測定され、詳細なデータが復旧作業に貢献しました。
例えば、被害の少なかった4号機建屋の3、4階内部を3Dレーザースキャナーを使用し詳細にデータ化したことで、1ー3号機原子炉建屋の状況を予測するのに活用されています。また、1号機建屋上部については、損傷箇所の形状や構造物の傾斜などを3Dレーザースキャナーで測定し、カバーの製作・設置作業に役立てられます。
1ー3号機原子炉建屋は、非常に高線量であり、短時間で健康被害がもたらされるため、作業員は長時間立ち入ることができません。
そこでここでは、3Dレーザースキャナーを搭載した、遠隔操作が可能な四足歩行ロボット(SPOT)によってデータが収集されました。さらに高線量の場所では、今後ドローンによる3Dレーザースキャナーの導入も検討されています。
このようにして得られたデータは、がれき撤去による線量低減や、廃炉作業関連設備の設置といった今後の廃炉関連作業ならびに、未調査範囲の調査計画立案への活用が期待されています。
災害復興における次世代の取り組み

災害復興は、インフラが復旧したら完了というわけではありません。その地域に暮らす人々がこれまで同様にその地で安心して暮らせるように、災害直後はもちろん、持続可能な街づくりの視点で長期的な支援をしていくことが重要です。
災害復興の現場における建設業界の取り組みも、時代とともにアップデートされています。
環境・安全への配慮
東日本大震災の復興工事では、がれきをリサイクル材として利用し、環境負荷を軽減する取り組みが行われました。
護岸強化に使われる土砂には、分別されたリサイクル材や、本来であれば埋め立てるはずだったがれき材などが再利用されています。廃棄物処理費用の削減と資源の有効活用を行いながら、中長期的な安全性を高めることに成功しました。
環境に配慮しながら安全性を高めるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の取り組みは、災害発生後の地域再建や持続的な街づくりにおいて、今後ますます重要になるでしょう。
効率的な復興体制の確立
能登半島地震でゼネコン12社が協力し、迅速かつ効率的な復旧作業を展開したのは先述のとおりです。
その反面、2024年10月現在においても、断水が続く地域があるのも事実です。
珠洲市真浦町(すずしまうらまち)は、土砂災害で復旧が難しいことから、水道管を新たに整備する判断に至った地域です。多くの人が暮らす都市の早急な復旧対応が賞賛される一方で、早期復旧困難地区の対応は今なお課題となっています。
さらには、「令和6年9月能登半島豪雨」によって、震災で甚大な被害を受けた地域が、復興の最中にまたも生活が困難になってしまう状況も発生しています。災害復興には明確な終わりがないだけに、住まう人々や次世代を担う若者たちが安心して暮らせる環境を取り戻すことが、真の意味での復興と言えるでしょう。
そこに向き合い、支援できる立場であることは、建設業に従事する意義のひとつです。
若手フィールドワーカーに期待されること

災害復興の現場で働くフィールドワーカーは、一人ひとりが人々の生活を支え、未来を築く大切な役割を担っています。
フィールドワーカーにとって災害復興活動は、災害大国日本の現実に向き合うと同時に、いかに普段の日常がありがたいかを感じるきっかけになるでしょう。使命感ややりがいを強く持ち、懸命に地域貢献を果たしている現場の想いがあってこそ、復興は実現できるものだと言えます。
使命感と誇り
災害復興に携わることは、人々の生活を守り、地域社会の再建に直結します。堤防や道路の復旧から住宅の再建に至るまで、フィールドワーカーの手によって整備されたインフラが、人々に安全と安心を提供しています。
災害復興の現場に携わったフィールドワーカーの中には「被災者からの感謝の言葉が仕事へのモチベーションとなった」と語る人も少なくありません。被災者が再び生活を取り戻し、街が徐々に復興していく姿は、建設業の協力がなければ成し遂げられない功績と言えるでしょう。
また、災害時にはその影響が顕著であるものの、日々の仕事も、地域社会や人々の生活を支える大切な役割を担っていることには違いありません。橋の修繕や道路の補修、建物の耐震工事など、インフラにかかわる日々の業務すべてが、地域の安全・安心につながっています。
成長とキャリア
災害復興の現場は、フィールドワーカーにとって大きな成長の機会にもなり得ます。
被災地の状況は刻々と変化し、通常のプロジェクトよりも複雑で困難な状況に対応することが求められます。一刻も早い復旧が望まれるため、平常時と比べて忙しさも増すでしょう。
また、企業をまたいだ情報共有が重要となるため、迅速かつ的確なコミュニケーションも重要です。このような現場での経験は、建設業に携わる上でかけがえのない知見となるだけでなく、次に同様の災害があった際の叡智として広く役立てられることが期待されます。
建設業の「現場の力」で被災地の日常を取り戻す
建設業は、災害発生時の応急対応から長期的な復興支援まで、多岐にわたる役割を担っています。特に、最新技術を活用したDXの導入により、迅速かつ安全な復興作業が可能となり、地域社会の早期再建が実現しています。
今後も、現場作業に従事するフィールドワーカーたちが使命感と誇りを持ち、災害復興の現場の活力となることが期待されます。日本各地の被災地が再び元気を取り戻すためにも、地域に根ざした建設会社は不可欠な存在です。
現場の使命や多くの人からの感謝を忘れずに、地場の建設業を衰退させず、若手がいっそう活躍できる業界として発展させていくことが、地域社会とともに歩む建設業のあり方として重要と言えるでしょう。

監修者 長谷部裕雄(はせべひろお)
国立研究開発法人 理化学研究所 仁科加速器科学研究センター
加速器高度化チーム、核化学研究開発室(兼務)技師
1999年より荷電変換用炭素薄膜製作を開始、世界でも数少ない長寿命炭素薄膜メーカー。113Nh生成用バッキング炭素膜も製作、次の新元素命名権獲得も狙う。 福島第一原発事故後、避難住民のためのスクリーニング作業に参加した。
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新着情報
- 2025/02/05 『労働安全衛生法(安衛法)とは?建設業における労災防止の取り組み例』を公開しました
- 2025/01/27 『現場の相棒・測量野帳にこんな使い方が?“ヤチョラー”の活用術を紹介』を公開しました
- 2025/01/17 優遇税制・補助金制度に『中小企業省力化投資補助金』を追加しました
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- Start Date
- 2025/02/20
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- 2025/02/20
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『建築施工ソリューション体験会』北九州トレーニングセンタで開催
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日程:2025年2月20日(木)10:00 ~ 17:00
会場:北九州トレーニングセンタ(福岡県北九州市)
参加費:無料
事前予約制・先着順
主催:株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン - URL
- https://bc.topconpositioning.asia/topconbc_taikenkai01-0
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- Start Date
- 2025/02/14
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- 2025/03/13
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日程:
2025年1月21日(火)
2025年2月14日(金)
2025年3月13日(木)
開催場所:白河トレーニングセンタ
参加費:無料(事前登録制)
主催:株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン、福井コンピュータ株式会社
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